昔習った有名な故事で、『鶏口牛後』という言葉がある。
孫引きとなるが、意味は以下の通り。
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鶏口牛後 意味
大きな集団や組織の末端にいるより、小さくてもよいから長となって重んじられるほうがよいということ。▽「寧むしろ鶏口と為なるも、牛後と為なる無なかれ」の略。「鶏口」は鶏の口(くちばし)。弱小なものの首長のたとえ。「牛後」は牛の尻。強大なものに隷属する者のたとえ。
大きな集団や組織の末端にいるより、小さくてもよいから長となって重んじられるほうがよいということ。▽「寧むしろ鶏口と為なるも、牛後と為なる無なかれ」の略。「鶏口」は鶏の口(くちばし)。弱小なものの首長のたとえ。「牛後」は牛の尻。強大なものに隷属する者のたとえ。
鶏口牛後 出典
『史記しき』蘇秦伝そしんでん
『史記しき』蘇秦伝そしんでん
鶏口牛後 故事
中国戦国時代、遊説家の蘇秦そしんが韓王かんおうに、小国とはいえ一国の王として権威を保つのがよく、強大国の秦しんに屈して臣下に成り下がってはならないと説いて、韓・魏ぎ趙ちょう燕えん斉せい楚その六国が合従がっしょうするのを勧めた故事から。
中国戦国時代、遊説家の蘇秦そしんが韓王かんおうに、小国とはいえ一国の王として権威を保つのがよく、強大国の秦しんに屈して臣下に成り下がってはならないと説いて、韓・魏ぎ趙ちょう燕えん斉せい楚その六国が合従がっしょうするのを勧めた故事から。
(三省堂 「新明解四字熟語辞典」より)
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この言葉、現代でも良く使われる。多くの場合、
「このまま大企業でサラリーマンとして働くより、小さい会社でもいいから起業したい。まさに鶏口牛後だ!」
のように、蘇秦さんの説得を認めるという形で使われる。
しかし、ちょっと待て。
以下、「合従連衡」のWiki
蘇秦さんは、強国『秦』に対抗するため、小国の六国を同盟させ、秦に対抗させるためにこの言葉を使ったようだ。
・・・でも、よくよく考えると、おかしくないか?
「鶏口」なら、なぜ六カ国で同盟したんだろう?
確かに牛後(大国「秦」という牛の尻尾)ではないので、六カ国の「鶏」の国王たちは自分のプライドを守れたかもしれないが、力関係を考えれば、六カ国で集まらないと、秦には到底太刀打ちできないような状態だったんだろう。
実際、このWikiの史実を見る限り、
『当初、六国は相互に結び、協力して秦の圧力を防ごうとした(合従)。秦は個別に同盟関係をもちかけて連合を分断し(連衡)、合従策を封じ、最終的に各国はすべて秦によって亡ぼされ、秦による天下統一が実現することとなった。』
とある。
つまり、蘇秦さんは「鶏口牛後」という言葉で韓の宣恵王を口説く事に成功したが、結果的には、六カ国の民衆の立場に立てば、国王たちが『牛後』という選択をしてくれた方が、死人の数が少なくて済んだのかもしれない。
今の日本の状況はどうなんだろう?
何だかんだ言って、今の日本では大企業の正社員が優遇されている。現時点では、精神論は別にして、『鶏口を目指して無茶するよりも、とりあえず牛後で様子を見た方がいい』というのが、現実的だと思う。少なくとも、大学を卒業して間もない普通の若者たちは、よっぽど優秀かつ実力があり、かつ、揺るぎない経営理念があり、かつ、ビジネスモデルとして卓越したものを持っていないのであれば、まずは最低数年間は、できれば社員教育が充実している、大きな企業で経験を積んだ方がいい、とアドバイスしたくなってしまう。
しかし、シャープ、パナソニック、ソニーを始めとして、10年前にはこうなるなんて全く予想すらできなかった、たくさんの大企業(巨大な牛?)ですら、どうなるか解らないような世の中。仮に『牛後』になれても、安心している場合じゃない。妙なもんで、35歳を超えると、大企業に長くいる人ほど、福利厚生・教育システムその他、しっかりしている事が多いので、転職に対しての心理的な抵抗は大きかったりする。つまり、気付かないうちに「温室育ち」みたいになってしまっていたりなんかする。沈んでいく大企業の中で、先の見えない不安を感じながら、必死に働く人達がいたとした場合、多分、その人達の心理的ストレスは、相当辛いものがあると思う。
はてさて、アラフォーの私の場合、妻と二人の息子を養うために、これから最低25年は働いて金を稼がないといけない。どうやって家族を養えるだけの金を稼ぎ、かつ、ワークライフバランスを上手に取るか。
よ~~~~く、考えないといけない。
正直言うと、現時点での日本の労働・社会環境と、守るべき家族がいて、大きなリスクを取れない自分の環境から総合的に判断すると、
『今の牛の尻尾から振り落とされないよう』、真面目に働き、
一方で、
『いざとなったら別の牛の尻尾に飛び移れるよう』、スキルを地道に育て、心構え、準備をしておく
これが私自身に限って言えば、妥当な戦略じゃないか、とか考えている。
日本は、同族経営、ファミリービジネスが非常に強い国。
鶏は、よっぽどの実力と運がないと、大勢の牛ファミリー達に踏み潰されてしまう可能性が高いのが、今の日本の悲しい現実だと思っている。
一方で、牛ファミリー達という日本の既得権を守り続けてばかりいると、もっと大きなグローバル化という巨大な化け物に、いずれは、牛も鶏も、みんなまとめて飲み込まれてしまう気もする。
今は、戦国時代や戦争があった昔に比べればとっても平和な時代なんだろうが、現代も、決して甘くはないよな、とか考える。
1 件のコメント:
「鶏口牛後 炎上」でググったら首位でちょっと嬉しい。
それはさておき、4年前の2013年、30代後半の時にはこれだけ理解していたのに、43歳になった今、どこへ行っても通用するスキルが何なのか、解らなくなってしまった自分が哀しい。
いつの間にか履歴書や職務経歴書に堂々と自信を持って書けるスキルがなくなってしまっている。
仕事で思うような結果が出せず、自信を喪失してしまい、自分が何をやりたいのか解らなくなってしまった43歳の自分。そしてもうすぐ会社から放り出される。会社も相当先が厳しい状況なのでやむを得ないんだが、人生は思い通りには行かないもんだな。
いつかまた自信を取り戻し、本題の記事のような事を本心から堂々と書けるようになりたい。残念ながらそれまでしばらく時間がかかりそうだし、もしかするとこのまま坂道を転がり落ちてしまうのかも、という恐怖の方が今は強いんだけど。
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