162の続き。
これをビジネスと関連付けると、面白い。
(155)で、日本人はSpeedはあるが、Agilityが弱点という意見を紹介した。
高度経済成長期のビジネス環境と、
ITが進化し、グローバル化の方向に進み続けている、
今のビジネス環境とを比較すると、変化のスピードが桁違いに速い。
かつては、Agilityよりも、Speedが、多分、KSF(Key Success Factor)だった。
一生懸命開発して、それを生産し、市場に売り出す。いい製品なら、どんどん売れる。
「早い」「安い」「うまい」に象徴される、日本のやり方により、世界が感動してくれた時代だ。
ところが、おそらく、ITの進化とグローバルの進展により、
今のKSFは、Speedではなく、Agilityになっている。
外部環境は変化するのが当たり前で、先を見通す事は誰にもできない。
だから、その場の変化によって、いかに高レベルの"Agility"を発揮できるによって、
企業として成功できるかどうかが決め手となっている。
携帯電話、パソコン、テレビ、太陽電池、
日本大手メーカーが、韓国や台湾、中国に負けている例、
ほとんど「Agilityで負けた」と言えるんじゃないだろうか?
Sharpの筆頭株主がフォンハイになったというのは、もう、
「Speedの時代じゃない、Agilityの時代だ」という事を象徴しているニュースに思える。
そんな中、サッカーのなでしこジャパンを考えてみると、
ヒントがある気がする。
なでしこジャパンの個人の能力を見れば、おそらく、
アメリカのフォワードの「ワンバック」さんのような、
身長、当たりの強さ、体力、シュート力等で上回るのは極めて難しいと思う。
しかし、なでしこジャパンが強いのは、「集団としてのAgility」が、
海外のサッカーのどのチームも真似できない程優れているからだと思う。
なでしこジャパンが、早いパス回しによって海外の競合チームを振り回すのは、
見ていて感動すら覚える。
これができるのは、佐々木監督が凄いという面もあるんだろうが、
プレイヤー皆、国内の女子サッカーリーグでの収入ではまともな飯すら食えず、
それでも頑張って夢を追いかける過程で、もの凄いハングリースピリットが生まれ、
それがチームの団結力、信頼感に繋がり、懸命の練習を経て、
今の早いパス回しができるチームになっているんだと思う。
ビジネスの世界に戻ると、多分、
日本語OSの強みを生かし続けながら、
「日本人同士のコミュニケーションの充実」を生かし、
海外の競合会社にできない事を達成する
という事が出来ない限り、日本の「ものづくり」の再浮上はない気がする。
「すり合わせ」が一番有効であろう、車の業界ですら、
HyundaiやVWがモジュール化により、日本式の「ものづくり」を陳腐化させる
革命を起こしつつある。
残念ながら、このモジュール化の流れは、時間軸は別として、
ありとあらゆる製造業に於いて、今後も進展し続けると思う。
従って、日本人が「ものづくり」にこだわればこだわるほど、
日本のメーカーは苦しい状況に追い込まれていく、
という泥沼は、多分、これからも続いてしまうだろう。
日本人のAgilityの弱さは、多分、日本人の宿命の「世間」「空気を読む」という
特質に起因しているから、多分、日本人が日本人である事を捨てない限り、
海外とAgilityで太刀打ちするのは難しいと思う。
残念ながら、「なでしこジャパン」のような奇跡が、製造業(ものづくり)の世界で起こるというのは、
私個人的には、
「ファンタジー」(幻想、夢)だと感じている。
・・・製造業の世界で、日本人サラリーマンとして約15年間飯を食ってきた自分としては、
身を切られるような思いがするほど辛い事だが。
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