2016年11月21日月曜日

(128) 続・困ったおじさん

前回の127のブログ投稿で、
「\500で牛丼を食べられる店で、バイト店員を罵倒する困ったオジサン」
について書いた。
 
おそらく、この悲しい現象は、日本の高度経済成長期に、
サービス向上を目指して日本人全員が頑張った努力の、悲しい習性が、
「残念な形で」残ってしまっているんじゃないかと思う。
 
海外との比較では、日本は、「お客様は神様です」という感覚が非常に強い。
(自分が実際に行った、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、中国、ニュージーランド、
少なくとも、これらの国との比較では全て当てはまる)
つまり、日本と言う国は、「金を払う客と言う立場」にいるなら、
住むには世界最高の快適な国だと思う。
 
ところが、これは裏返すと、
「サービス、物を提供する側で働く場合、顧客要求が極端に高い」
つまり、日本で「働いて」、「金をもらう」というのは、
おそらく、世界でトップクラスに気を使い、大変であるという事を意味する。
 
日本で現在進行形で働き、金を稼ぎ、その金でサービスを受けるなら、それは「フェア」だ。
しかし、高度経済成長期に稼いだ金をたんまり貯金して、それで日本人の若者に対して
金にモノを言わせて偉そうに言うのは、非常に腹立たしい。
しかも、国の借金を山ほど増やしている現状は、
先に死んでいく高齢者程「得」、若い人ほど「損」と言える(世代間格差)。
 
「困ったオジサン」が極めて問題なのは、以下の理由による。
 
日本の高度経済成長期、今の若者達がバイトで働いているような、
高度にシステム化された、
「500円で食べられる牛丼店、カツ丼店、天ぷら店」等は、今ほどなかったし、
「大勢のバイト、フリーターによる労働力を前提とした、コンビニ、小売店」等も、今ほどなかった。
高度経済成長期は、おそらく日本人全員が、「お客様は神様です」教を信じ、
日夜、「早い、安い、うまい」、「顧客満足度向上」を目指して頑張った。
 
高度経済成長期には、「サービス向上のため」、客が、
店員や店長に対して文句を言う事は、店のサービス向上に貢献した部分があり、
実際、その顧客の厳しい目があったから、これだけ日本のサービスは向上し、
世界でもトップクラスになった。
 
ところが・・・である。
 
もう、そのレベル向上は限界に近いところまで進んでしまい、
バイトの給与は、「高度に進化したマニュアル通りに働けばいい」
という事を前提とし、市場原理に基づいた限界の安さにまで行きついてしまっている。
 
困ったオジサンが、もし、定年退職し、自分は、現在進行形で
日本社会に対して労働力を供給していないにもかかわらず、
「\500牛丼店のバイトを叱責する」という行動を取っているのだとすれば、それはこの事を理解していない。
高度経済成長期なら必要な行動だったかもしれないが、今は、害悪以外の何物でもない。
 
もし万一、日本の顧客の多くが、
「困ったオジサン」化(クレーマーの多数発生)するような事があれば、
\500牛丼店側も対策を取らざるを得なくなる。
 
これは即ち、日本がこれまで積み上げてきた、
「高度なサービス」のレベル低下そのものであり、
従って、「困ったオジサン」の発生数は減らす必要がある。
 
そういや、俺が小学生くらいの頃(約25年前)、自分の実の父親も、
家族旅行で泊まったホテルのレストランのサービスが悪いと、
子供の目から見た時に、
「お父さん、そんなこと言わなくていいよ、いつものお父さんと違うよ」
と思うような剣幕で、店員に食ってかかった事があった。
 
多分、今の60代、70代の人にとってみれば、
「店員が客に心のこもったサービスをするのは当たり前」
という感覚なんだろう。
 
・・・そういう時代がこれからもずっと続けばいいと思うが、
グローバル化して、単純労働により近い、
店員さん達の給与が世界標準(例えば、時給\800以下)に近い現状を考えると、
多分、「マニュアル通りのサービス」で客側は満足し、
「マニュアル以上の心のこもったサービス」を、
客側が権利として求めるのは、無理がある時代だと思う。
 
(ここからは蛇足かもしれないが・・・)
 
一方で、未だに、
近所のコンビニのバイトの店員さん達の中には、
マニュアル以上に心のこもったサービス、笑顔を見せてくれる人も、
多数存在していると感じている。
 
多分、この「マニュアル以上」の部分が今現在も、残っている事が、
日本の強みの一つであり、その辺を理解したうえで、
「分別ある、ちょっとだけ困った、おせっかいな、オジサン」
みたいなオジサンに、俺は将来、なってみたいなと思う。
 
「お見合いオバさん」や、
「結婚相手を紹介したがる、おせっかいな親戚のオジサン、上司」
こういうお節介な人が全くいなくなるのも、寂しく、
日本と言う国の良さを維持すると言う観点で考えた時、
別の意味で問題がある気がする。

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