2016年11月30日水曜日

(375) 相対敬語と絶対敬語

今日発売のSPA!の、佐藤優さんのインテリジェンス人生相談の記事を読んで知ったんだが、儒教を背景にして、同じような敬語の文化がある日本と韓国だが、日本の場合は相対敬語、韓国の場合は絶対敬語を使うという点で、大きな違いがあるらしい。
 
「絶対敬語 韓国語」とかでネット検索するといろんな例が出てくる。
 
例えば会社での電話応対の時、
新入社員の山田君が、部長の田中さんが今日出張している事を相手に電話で伝える際、
(お客さん)「田中様はいらっしゃいますか?」
(山田君)「部長の田中は本日出張しております」
と応対する。
 
しかし、これが絶対敬語である韓国語の場合は、
(お客さん)「田中様はいらっしゃいますか?」
(山田君)「部長の田中様は本日出張なさっています
と言うらしい。
 
ここに、日本の特徴が非常に良く現れていると思う。
 
例えば、日本の大手企業(A社とする)の社長さんの事を、その会社の従業員の人達は当然、社内で「~社長」と呼ぶ。頭の中では誰も皆、凄く偉い人と思っている。しかし、どんなに小さな取引先で、たとえ相手が新入社員であっても、社外の人と話す時には、「弊社社長の~は、こう申しております」のように、謙譲語を使う。
 
企業として、世間に対して謙虚な考え方を持っているまともな会社である事を表現するため、こういう言葉の使い方は、新入社員教育等で厳しく教え込まれるはずだ。
 
これは、ある意味、権力が暴走しないよう、歯止めにもなっている。つまり、日本の場合、どんなに出世して会社の中で偉くなったとしても、社外に対して、「俺は社長だぞ!!」的な傲慢な態度を見せる人は、世間から厳しく処罰される。
 
絶対敬語の世界では、おそらくだが、社内、社外全てにおいて社長は敬語を使われる立場になる訳だから、権力暴走の抑止力が弱いんじゃないかと思う。
 
こういう日本人の相対敬語の習慣を悪用して、クレーマーや、モンスターペアレント等、客である事の権利を過度に主張する人が発生してしまうのも、日本の文化的特徴なんだろうが、権力の暴走を抑えるというのは、実は結構重要な役割を果たしていると思う。
 
経済的には一億総中流の時代は過ぎ去り、さらに格差が広がっている気はするものの、心理的にはやはり、未だに日本人は平等意識が強いと思う。
 
相対敬語を当たり前に使う国って、世界を見渡しても日本だけなんじゃないだろうか?
非常に面白い特徴だと感じた。

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