2016年11月30日水曜日

(364) 「前後」と時間、空間

昨日気になって調べた「先」(さき)という言葉について、さらに考えてみた。
 
先(さき)という言葉の反対語は、後(あと)が思い浮かぶ。
でも、後(あと)の反対語が何かと聞かれると、前(まえ)の方がまず思いつく。
 
前後(ぜんご)とは言うけど、『先後』という単語は聞いたことがない。
でも、野球の試合では、【先攻、後攻】であって、【前攻、後攻】ではない。
 
ここまで来ると、映画化もされた「舟を編む」の辞書を作る人の仕事になるかもしれないが、
広辞苑とかで調べると、「前」と「先」の違いのヒントがあったりするのかもしれない。
いつかやってみようと思うが、今度にしよう。
 
 
まずは今回、なんちゃって通訳みたいな仕事をしている自分の場合、英語はどうかな?と考えた。
 
感覚的にだが、日本語の場合は、「前後」にせよ、「先(さき)」にせよ、
時間的な使い方、空間的な使い方が、同じくらいの割合のようなイメージがある。
 
「昼ご飯を食べる前に仕事片付けよう」 (時間)
「机の前に座って勉強している」 (空間)
 
どちらも自然な使い方だが、逆に言うと、同じ「前に」という一つの言葉を、兼用している。
 
英語の場合も、文語の場合は、時間と空間両方で使うケースもあるようだが、
日常的な使い方では時間と空間とを、使い分けている。
 
時間 : before, earlier, later, after, since, untilなど。
空間 : in front of, behind, towardなど。
 
よくよく考えてみると、(時間的な)前後と、(空間的な)前後という概念は、
全く違う概念であって、それを同じ言葉で表すというのは、非常に面白い。
 
人間には、空間は見えても、時間は見えない。(視覚)
でも、空間を聞くことはできず、音の中に時間が入り込んだ「聞く」という行為を通して、人は時間の流れを想像できる。(聴覚)
 
以前にもブログに書いたが、養老先生が著作で書かれている、
「聴覚を司る所と、視覚を司る所を脳内で無理やりくっつけた事で、人類だけが言語を操るようになった」
というイメージが重なる。
 
多分だが、英語が時間と空間を使い分けるようになったのは、後になってからだと思う。
元々の言語発生時には、人間は時間と空間を一緒くたにしていた。
 
だから、現在でも、日本語の「さき」「まえ」「あと」は、時間にも空間にも使われているんだろうと思う。
 
英語に関しては、最初は時間・空間両方に使われていたものを、使い分けたほうが便利という理由で、時間を表す前置詞と、空間を表す前置詞に分化していったんじゃないかな、とか考えた。
 
科学論文の世界とかで、空間や時間、実験結果を文章にする時には、日本語よりも英語の方が明確で、誤解が生じにくい文章を書きやすい気がするが、それはこういうのも一因かもしれない。
 

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